第5章 記憶×記録
五条は数秒考える素振りを見せたあと。
五条「ま、どうにかなるっしょ!」
にこっ。
そして。
五条「てへっ☆」
釘崎「腹立つ。」
伏黒「最悪だ。」
真希「絶対なんも考えてねぇだろ。」
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その日の夜。
乙骨の部屋には静かな電子音だけが響いていた。
乙骨はベッドへ腰掛けたまま、
手の中のスマホを見つめている。
蘆屋のスマホだった。
五条「「預かっといて。」」
昼間、五条がそう言って渡してきたものだ。
画面を開けば、ロックはかかっていなかった。
乙骨「!?……さん、不用心すぎるなぁ、まったく・・・・。」
てっきり、いつもは顔認証で開けているのかと思っていたら
スッと現れた画面に少しだけ躊躇う。
乙骨(恋人のスマホを見るって・・・・・)
乙骨「ぅぅ、、さんごめんなさい、失礼します。」
罪悪感と、申し訳なさで、つい、口に出して謝ってしまう。
乙骨は静かにLINEを開いた。
トーク一覧。
その中にある、自分の名前。
未読のまま止まっている会話。
乙骨の指先が、僅かに止まる。
乙骨「……。」
小さく息を吐く。
――そういえば。
ふと、そんな考えが浮かんだ。
乙骨(さんは、どこへ行きたかったんだろう。)
記憶が戻らないなら。
せめて、好きだったものくらい見つけられないだろうか。
そんな気持ちで、乙骨はスマホを開き直す。
写真フォルダ。
検索履歴。
SNS。
・・・・そして、ふと、メモアプリが目に入った。
何気なく開くと、そこには短い箇条書きが並んでいた。
○買うもの。
○任務 ●月●日
○打ち合わせ ✕時✕分~
その中で、一つだけ。
乙骨の視線が止まる。
『○行きたいところ』
乙骨「・・・・!」
→ひまわり畑 → ソフトクリーム→
乙骨「……ひまわり畑か。」
あまりにも普通の。
あまりにも、可愛らしい行先だった。
乙骨はすぐにスマホで検索をかける。
“ひまわり畑 東京近郊”
いくつか候補が表示される。
その中の一つ。
高専から少し離れた場所にある、小さな観光農園。
掲載されていた写真には、一面のひまわり畑と、
その横で売られているソフトクリーム。
乙骨「あ……。」
思わず声が漏れる。
乙骨(たぶん、ここだ。)