第5章 記憶×記録
その言葉は懇願ではなく。
決意だった。
五条は黙ったまま乙骨を見つめている。
乙骨「忘れられててもいいんです。」
ぽつり、と落ちる声。
乙骨「覚えてなくても。」
拳が白くなるほど握り締められる。
乙骨「また、最初からでもいいから……。」
一瞬、言葉が震えた。
乙骨「……会いたい。」
その空気に、虎杖がぐっと唇を噛む。
伏黒も静かに目を伏せた。
釘崎でさえ、何も言えなかった。
五条だけが、静かに息を吐く。
そして。
五条「……優しいねぇ、憂太は。」
いつもの軽い声音。
けれどその奥に、ほんの少しだけ苦さが滲んでいた。
五条はしばらく生徒たちを見渡したあと、
――はぁぁぁぁぁ……。
わざとらしいほど深いため息をついた。
五条は頭をがしがし掻きながら、天井を仰ぐ。
五条「……いやぁ〜〜〜〜〜。」
心底困ったような声。
五条「憂太がそこまで言うならなぁ〜〜〜〜。」
乙骨が僅かに顔を上げる。
次の瞬間。
五条「じゃ、明日。」
ぱんっ、と手を叩く。
一気に空気が変わった。
五条「みんな休みだけど、ここ集合ね〜!」
虎杖「……へ?」
五条「ちゃん連れてくるから。」
数秒、沈黙。
釘崎「……は?」
伏黒も絶妙な表情をしている。
釘崎「え、待って。」
さっきまでの重苦しい空気はどこへ行ったのか。
釘崎「今までのシリアス何だったの?」
五条「え?」
釘崎「え?じゃないのよ。」
五条はけろりとした顔で首を傾げる。
そのまま乙骨の肩へ腕を回した。
五条「だってさぁ〜。」
ぐりぐりと乙骨を引き寄せながら、にやっと笑う。
五条「ここまで可愛い教え子にお願いされたら、断れるわけなくない?」
乙骨「ご、五条先生、苦しい……。」
五条「どうせならさ・・・!」
そのまま勢いよく腕を広げる。
五条「ぱーっとお迎えしようよ!!」
パンダ「切り替え早すぎるだろ。」
釘崎「いや、そうね!そうと決まれば場所決めよ!!!」
急ににぎやかな教室。
そんな中。
真希だけが腕を組んだまま、冷静に口を開いた。
真希「……で。」
五条「ん?」
真希「上層部のジジイ共は大丈夫なのかよ。」