第5章 記憶×記録
虎杖は困ったように眉を下げながらも、
どこか諦めきれていない顔をしている。
虎杖「逆に、俺らに会えば思い出すかもしれないじゃん。・・・っていうか俺の宿儺が関係してるなら、俺のせいでもあるし・・・その・・・・。」
五条は何も答えない。
虎杖「・・・い、一緒に任務行ったし。戦ったし。飯も食ったし。」
言葉を探すように続ける。
虎杖「そういうのって、なんか……きっかけになったりしねぇかな・・・・?」
伏黒も静かに視線を上げた。
伏黒「俺も、そう思います。」
釘崎が少し驚いたように伏黒を見る。
伏黒は淡々とした顔のまま続けた。
伏黒「完全に切り離された環境に置く方が、逆に記憶の定着を阻害する可能性もある。それに、蘆屋先生は乙骨先輩に会った思い出すかもしれないじゃない。」
虎杖「そうそう!」
虎杖は勢いよく頷く。
けれど、五条は表情を変えなかった。
五条「……。」
その沈黙に、虎杖の表情が少しずつ曇っていく。
虎杖「……五条先生?」
五条はゆっくり息を吐いた。
五条「悠仁。」
名前を呼ばれ、虎杖が姿勢を正す。
五条「もしさ。」
その声は静かだった。
五条「仮に君たちに会っても、何も思い出さないかもしれないし。」
ゆっくりと言葉を置いていく。
五条「逆に、思い出すかもしれない。」
食堂の空気が、張り詰める。
五条「……彼女が忘れたいことを、強制的に思い出させるのってさ。」
五条の、隠された視線が静かに伏せられる。
五条「酷だと思わない?」
誰も答えられなかった。
五条「それで――/乙骨「それでも……!!」
空気を裂くように、声が響いた。
全員がはっと顔を上げる。
乙骨だった。
いつもなら誰かを遮るようなことはしない彼が、
珍しく感情を露わにしていた。
震えるように拳を握り締めたまま、俯いていた顔を上げる。
乙骨「……さんが、僕のことを忘れていても。」
掠れた声。
けれど、その瞳だけは真っ直ぐだった。
乙骨「もう一度……。」
喉が詰まる。
それでも、絞り出すように続ける。
乙骨「もう一度、友達からって……思います。」
静まり返った食堂に、その声だけが残る。
乙骨「だから……。」
呼吸が乱れる。
それでも目を逸らさない。
乙骨「会いたいです。」