第6章 春夏「秋」冬
直哉の腕がの腰を引き寄せる。
重なる唇は熱を帯び、呼吸が少しずつ乱れていく。
は目を閉じたまま、静かに術式を流し続けた。
ゆっくり。
気付かれないように。
呪力の流れを鈍らせていく。
直哉「……っ、」
不意に、直哉の喉から浅い息が漏れた。
眉がわずかに寄る。
けれど唇は離れない。
むしろ熱に浮かされたみたいに、さらに深く触れてくる。
蘆屋はそのまま静かに首へ腕を回した。
甘えるみたいに距離を詰めながら、さらに深く沈めていく。
呪力の巡りが鈍る。
身体の奥で、力が抜けていく感覚。
直哉はゆっくり息を吐いた。
直哉(……あかん。)
頭が妙にぼんやりする。
視界の輪郭が滲む。
身体に力が入らない。
それなのに、彼女の体温だけがやけに近く感じた。
直哉(……全然、力入らん……。)
掴んでいたはずの腕から、少しずつ力が抜けていく。
呼吸が浅い。
身体が重い。
違和感を覚える頃には、もう遅かった。
蘆屋の指先が首筋へそっと触れる。
その瞬間、直哉の視界がぐらりと揺れた。
直哉「……っ、」
小さく息を呑む。
もう意識が沈み始めていた。
蘆屋の肩へ額が触れる。
力の抜けた身体が、ゆっくり傾ぐ。
直哉(……まさ、か……)
最後まで言葉にならない。
薄れていく意識の中、直哉はかすかに彼女の姿を見た。
静かな瞳。
「サインありがとうございます。」
うっすらと、口角をあげて見下ろす顔は優しく落ち着いていた。
直哉がそこでようやく理解しかけた瞬間――
直哉の身体から、完全に力が抜けた。
どさり、と。静かな和室に、重たい音だけが落ちる。
気絶した直哉の乱れた服を少しだけ整えて、立ち去ろうとしたとき・・・
(うーん・・・あっ。)
ふと思い出したように、スマホを取り出し、床に倒れた直哉を背景にベッと舌をだして、
“やっちゃった”と言わんばかりに写真を撮って、五条に送り付けた。
「顔だけはきれいなのに・・・もったいない人」
気絶した直哉をみてつぶやく蘆屋。
(・・・・久しぶりに男の人とキスした気がする・・・。それにこの人・・・。)
乙骨には言えない秘密がまた1つできてしまった。