第5章 記憶×記録
-ぱたん。
扉が閉まる。
静まり返った廊下。
数秒。
五条はその場で立ち止まったまま、
カワウソ呪骸を目の前まで持ち上げてジッとみる。
五条「……」
カワウソはつぶらな瞳で見返してくる。
五条はじっとその顔を見つめたあと、
ぼそりと呟く。
五条「……お前もしかしてオスか?」
呪骸「……」
五条「可愛い顔してやることやるのネ」
呪骸「ガルルル……」
低い威嚇音。
五条は思わず吹き出した。
五条「ははっ、図星?」
・
・
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しばらくして。
脱衣所の扉が開き、
湯気と一緒に蘆屋が姿を現した。
柔らかな部屋着。
少し湿った黒髪。
風呂上がりの熱で頬がほんのり赤い。
ソファに座っていた五条悟がちらりと視線を向ける。
五条「さっぱりした?」
「しました〜……」
タオルで髪を拭きながら、
テーブルに置かれていたスキンケア用品へ手を伸ばした。
ぱたぱたと化粧水を馴染ませながら、
ふと鏡を見て眉を下げる。
「……はぁ」
五条「なにそのため息」
五条が笑う。
蘆屋はむっとしながら、自分の首元を指差した。
「これです……」
そこには、うっすら残った歯形。
赤く点々と残る噛み跡が、目立っていた。
「これ、治りますかね〜……もう……」
完全に拗ねている声。
五条は吹き出しそうになるのを堪えながら、
ソファの背へ肘を乗せる。
五条「大丈夫じゃない?そのうち消えるよ」
蘆屋はさらに不満そうな顔をする。
そのまま袖をめくり、
「ほら、ここも……」
次は手首。
「ここも〜……」
太腿の辺りも指差す。
「もう歯形だらけです……」
見せられるたび、
五条の視線が微妙に泳ぐ。
風呂上がりで薄く火照った肌。
そこへ散らばる小さな赤い痕。
昼間見た時より、
妙に柔らかく見えてしまって困る。
五条はわざと軽く笑った。
五条「保湿するといいらしいよ」
「そっか……」
蘆屋が露骨に顔をしかめながら、ボディクリームを手に取る。
「暑い時って塗りたくないんですよね〜……べたべたするし・・・」
五条「ほら、貸して。お嫁に行く前に歯形なんかつけてたら、いけないよ〜」