第5章 記憶×記録
食事を終え、食器を洗い終えた頃には、
すっかり夜になっていた。
窓の外には静かな月明かり。
水を止めた蘆屋が、ふぅ、と小さく息を吐く。
その背後から、
髪を軽く拭きながら五条悟がリビングへ戻ってきた。
風呂上がりらしく、少しラフな格好。
濡れた白髪から雫が落ちる。
五条「お、ありがと〜。全部やってくれたんだ」
「これくらい普通です」
五条はそんな姿を眺めながら、
どこか穏やかに笑った。
五条「じゃ、次ちゃん入ってきなよ」
「あ、はい。お風呂頂きます」
頭の上に乗っていたカワウソ呪骸を抱えたまま、脱衣所へ向かう。
ぱたん、と扉が閉まる音。
その数十秒後。
スカートへ手を掛け、
脱ごうとした、その時だった。
からり。
五条「――あ、着替え……」
不意に扉が少し開く。
五条「置くの忘れて――」
そこで五条の言葉が止まった。
蘆屋も固まる。
五条「……」
「……」
視線がぶつかる。
五条「……ごめん」
五条が珍しく一瞬だけ目を逸らした。
五条「見るつもりはなかったんだけど」
蘆屋は慌ててスカートを掴み直す。
「……!」
五条「いやほんと事故。ほんと」
そう言いながらも、五条の脳裏には、
一瞬見えてしまった景色がしっかり焼き付いていた。
白い肌。
少しむちっとした太もも。
そして。
太腿から内腿にかけて、無数についた小さな歯形。
朝から何度も噛まれた痕。
それが妙に生々しくて。
――……やば。
一瞬、
思考が止まる。
呪骸の噛み跡だとわかっている。
わかっているのに。
柔らかな肌に散った赤い痕が、
どうしようもなく扇情的に見えてしまった。
五条(・・・・かなり、くる。)
自覚した瞬間、
五条は内心で自分に舌打ちした。
何考えてんだ、僕。
五条「……あー、えっと、うん」
誤魔化すように視線を逸らし、
五条は主人公の腕の中にいたカワウソ呪骸をひょいと持ち上げた。
五条「・・・呪骸は預かるヨ」
「あ、はい、、、、」
五条はそのまま脱衣所を後にした。