第5章 記憶×記録
「じゃあ、あなたは……お兄さん、みたいな……」
五条「みたいな?」
「……違うんですか?まぁ・・・似ているかと言われたら全然似てないかも・・・・。というか私って・・・・」
写真を見て眉を顰める蘆屋。
五条「はははっ!確かにネ、似てないね」
蘆屋は、一枚の写真で手が止まる。
和装姿の自分。
その写真の裏に、小さく文字が書かれていた。
――蘆屋。
瞬間。
頭の奥が、ずきりと痛んだ。
「っ……」
視界が揺れる。
暗い廊下。
血の匂い。
泣き声。
誰かが叫んでいる。
『ここはもうだめだ・・・逃げろ』
『誰一人残すな』
『あの子だけでも――』
呼吸が浅くなる。
頭の奥へ大量の記憶が流れ込んでくる。
(私は。蘆屋――。五条家の人間じゃない・・・)
「うぅ……っ」
脳裏に、“それ”が現れる。
赤黒い闇。
笑う口。
四つの眼。
圧倒的な呪力。
――宿儺。
ぞわり、と全身の血が凍る。
「いや……」
思い出そうとした瞬間、身体が拒絶した。
頭痛。
吐き気。
鼓動が暴れる。
何かを思い出しかけている。
でも、思い出してはいけないと、
本能が叫んでいた。
「っ、は……ぁ……!」
肩が震える。
その瞬間。
五条「――おい」
五条がすぐに距離を詰める。
蘆屋の身体を支え呼吸を確認する。
五条「大丈夫。こっち見て」
低い声。
落ち着いた声音。
震える視界の中で、五条を見上げた。
「……こわ、い……」
掠れた声。
「何か……」
彼女の動揺を見て五条の瞳が僅かに細まる。
宿儺関連。
そこだけ、記憶が拒絶しているのだろう。
五条「いいよ」
静かな声。
五条「無理に思い出さなくていい」
蘆屋は荒い呼吸のまま、力なく目を閉じる。
断片的な記憶だけが残る。
蘆屋の名。
五条家で過ごした日々。
そして――
そこから先はまるで霧の向こう。