第5章 記憶×記録
~東京(某所)~
静かな夜だった。
窓の外には淡い月明かりが落ち、障子越しの光が部屋の畳へぼんやりと滲んでいる。
は布団の上に座ったまま、自分の手を見つめていた。
知らない部屋。
けれど、不思議と怖くはない。
鼻先をくすぐるのは、どこか懐かしい木の匂い。
その時。
襖の向こうから、軽い足音が近づいてくる。
五条「失礼しま〜す」
間延びした声と共に襖が開いた。
現れたのは、五条悟だった。
片手には大きなアルバムの束。
もう片方には湯気の立つトレー。
五条「はいこれ。見たいかと思って」
どさり、とアルバムが机へ積まれる。
主人公はぱちぱちと目を瞬かせた。
「……そんなに沢山」
五条「まっ、僕、意外とマメだからね」
五条は得意げに笑い、そのままトレーを差し出す。
白い湯気。
優しい香り。
五条「あと、こちら、五条家特製シチューですよ〜」
「五条家特製……」
五条「まぁ僕が作ったわけじゃないけど」
蘆屋は興味本位でアルバムへ手を伸ばす。
古いフィルムの匂い。
最初のページを開いた瞬間。
「……あ」
そこには、黒髪の女の子が映っていた。
ぎこちなく座る黒髪の少女。
その隣で、長い脚を投げ出しながら
ピースしている白髪の青年。
今より少し若い顔。
けれど間違いなく、
目の前にいる五条悟だった。
ページをめくる。
庭。
縁側。
七夕。
夏祭り。
海。
ハロウィン。
クリスマス。
控えめににこり笑う少女と、
その隣でふざけ続ける五条悟。
少しずつ少女の表情が柔らかくなっていく。
その全部に、五条悟がいた。
蘆屋は写真へ指先を添える。
「大切な人、って……」
五条が静かに視線を向ける。
主人公はアルバムを見つめたまま、小さく呟いた。
「私たちが家族、だから……?」
その問いに、
五条は少しだけ黙った。
月明かりが白い睫毛へ落ちる。
やがて彼は、小さく笑った。
五条「……まぁ、そんなところ?」
ページをめくる。
成長していく自分。
隣にいる五条。
知らないはずなのに、
胸の奥がじんわり温かくなる。