第6章 春夏「秋」冬
~ 禪院家(再訪問) ~
夕暮れ前。
空は薄曇りで、冷たい風が石畳を撫でていた。
禪院家の広大な屋敷は相変わらず静かで、重苦しい空気を纏っている。
門の前へ立ったは、無意識に小さく息を吐いた。
隣には五条。
長い脚を組むみたいに気怠げに立ちながら、
片手をポケットへ突っ込んでいる。
前回ここへ来た時は、使用人が出迎えに来た。
だが今日は違った。
門が開いた瞬間――
奥の石畳を、ひとりの男がゆっくり歩いてくる。
規則正しい足音。
和装姿。
鋭い目元と、余裕を含んだ口元。
は思わず眉を寄せる。
五条は小さく鼻で笑った。
五条「へぇ。」
男は二人の前まで来ると、ゆるく口角を上げる。
直哉「わざわざ出迎えたっちゅうのに、えらい嫌そうな顔やなぁ。」
軽薄そうな笑み。
直哉「そんで、今回は五条悟まで一緒に連れてきたんか」
「・・・いえ。」
次の瞬間。
直哉の視線が、の首元へ落ちた。
薄く残った痣。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ、直哉の目が細くなる。
だがすぐに、何事もなかったみたいに笑った。
直哉「・・・痕、のこらんでよかったなあ。」
「……!」
五条「へぇ、ってことは、やっぱりお前か。」
隣で五条が笑う。
いつもの軽い口調。
なのに空気だけが妙に冷たかった。
直哉「さぁ、どうやろうなァ」
悪びれもせず返す。
五条「・・・・また手をだしたら、ココごと吹き飛ばすから覚悟しておけよガキ。」
互いに笑っているのに、空気だけが全く笑っていない。
直哉「お~、怖い怖い。まぁ立ち話もなんやし、入りーや」
「・・・おじゃまします。」
冬前の冷えた風が吹き抜ける。
紅葉が一枚、石畳へ落ちた。
五条がついてこないのを確認すると、
直哉「なんや、ただの送り迎えか?
だいぶ贅沢な使い方しとんなぁ」
「・・・・来なくていいって言ったんですけどね。
半分は、あなたのせいです。」
広い廊下。
磨かれた床板。
障子越しに差し込む夕暮れの光が長く影を落としている。
先を歩く直哉は振り返らない。
規則正しい足音だけが静かに響く。