第6章 春夏「秋」冬
「めぐみくん・・・?」
五条「そう、仲良くしてやって」
伏黒「・・・」ペコリ
小さく頭を下げるも戸惑っている伏黒を見て、
蘆屋ははくすりと笑う。
「ふふっ、よろしくね」
ひらひらと舞う桜が二人の間を通り過ぎていく。
廊下に吹き込む桜の匂いと、陽だまりみたいな笑顔だけが、
やけに鮮明に胸に残った。
――それが、伏黒恵の初恋だった。
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「ふーしーぐーろーくん?」
伏黒「・・・あ、はい。すみません。少し考え事を・・」
「ん?なぁに、難しい顔して。」
伏黒「別に。」
視線を逸らしながら短く返す。
蘆屋はあまり気にする様子もなく「そう?」と一言返事をして荷物をまとめる。
「ほら、遅くなっちゃったから帰るよ。
寮まで送るから。」
伏黒「はぁ?何言ってるんですか。」
呆れたように顔を上げた。
伏黒「送るのは男の仕事なので。」
「えぇ・・・」
思わず間の抜けた声が漏れる。
「もしかして・・・恵くんって、好きな女の子は心配してほっとけないタイプ~?」
意地悪そうな顔でちょっかいをかけてくる蘆屋。
伏黒「その呼び方やめてください。
・・・否定はしませんが、普通に心配なので俺が送ります。」
ため息をついて支度をする。
伏黒「夜道、一人で歩かせたら乙骨先輩に何言われるか分かんないんで。」
ぶっきらぼうにそう言って、扉を開ける。
廊下の向こうはもう夜色に染まり始めていた。
「ふふっ、ありがとう」
伏黒「別に。」
そっけない返事。
けれど歩幅だけは、ちゃんとに合わせるみたいに少しゆっくりだった。
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