第6章 春夏「秋」冬
~ 禪院家 ~
数日後。
夕暮れが落ち始めた頃。
は、一人で禪院家の門の前に立っていた。
古く大きな屋敷。
重たい空気を纏うその場所は、まるで時代だけ切り離されたみたいに静まり返っている。
「・・・・はぁ。」
小さく息を吐いてから、インターホン代わりの呼び鈴を鳴らす。
しばらくして。
ゆっくりと門が開いた。
現れたのは、和服姿の使用人だった。
使用人「蘆屋先生、ですね。」
「はい。東京校の蘆屋です。
本日は、禪院真希さんの進路面談でお伺いしました。」
広い廊下。
磨き上げられた木の床。
静かすぎる屋敷の中では、自分の足音だけが妙に響いた。
(うぅ・・・なんか緊張するなぁ・・・。)
真希が嫌がる理由も、少しわかる気がする。
張り詰めた空気。
視線はないのに、常に誰かに見られているような感覚。
しばらく歩いたあと、使用人が襖の前で立ち止まった。
使用人「こちらでお待ちください。」
「ありがとうございます。」
襖が静かに閉じられる。
通された部屋は広く、整いすぎるほど整っていた。
「・・・・。」
正座したまま、そっと周囲を見渡す。
静かだ。
時計の音すら聞こえない。
その時。
――す、と。
襖の向こうで気配が動いた。
「?」
ゆっくり襖が開く。
現れたのは、長い前髪を揺らした青年だった。
細い目。
気怠げな立ち姿。
だが、その視線だけは獲物を見るみたいに鋭い。
直哉「・・・・へぇ。」
「・・・・?お邪魔しています。」
現れたのは禪院家次期当主候補。
禪院直哉。
(この人が・・・真希ちゃんのお兄さんにあたる・・・)
直哉「アンタが真希の担任なんか?」
関西訛り混じりの声。
「はい。東京校で教師をしている蘆屋です。」
軽く頭を下げる。
すると直哉は、
じっと蘆屋の顔を見たまま動かなかった。
「・・・・えっと。なにか。」
直哉「・・・・ふぅん。」
その“ふぅん”には妙に含みがある。
直哉は壁へ軽く寄りかかりながら、値踏みするように眺めた。
直哉「真希の話やと、もっと堅苦しい女教師か思てたわ。」