第1章 彼女の計画、彼の差別化。+
うさみがベッドの上に腰を下ろすと、彼はのそりと這い寄ってきて、膝に顔を押し当てた。
「…………」
無言。
けれど、うさみの腰を抱き寄せる腕の力は、驚くほど強い。
饒舌だった口は、今はただ熱い吐息を吐き出すためだけに機能している。
言葉で愛を囁く余裕なんてない。ただ、目の前の女性を、自分の匂いで上書きした「白」の中に閉じ込めることだけで頭がいっぱいなのだ。
拓人は顔を上げないまま、うさみの着ているスウェットの裾を、震える指先で少しずつ捲り上げる。
「……目、……見んなよ」
「え……?」
「見んなって。……今、たぶん俺、……ひどい顔してるから」
低い声が、うさみの肌を震わせる。
不器用な手つきで、けれど執拗に、彼はうさみの肌をなぞり始めた。
いつもならスマートに進めるはずの指先が、もどかしく、焦るように這い回る。
目が合わないことが、かえって彼の「余裕のなさ」を浮き彫りにした。
自分を翻弄した年上の女への、ささやかな、けれど必死の逆襲。
彼はうさみの首筋に深く、深く歯を立てて押し倒し、そこを吸い上げるようにして、確かな「印」を刻みつけた。
「……っ、……あ……」
うさみが声を上げると、彼はその声に反応するように、いっそう腕を強く回す。
言葉はない。ただ、密着した身体から伝わる、鼓動の速さだけが、彼の隠しきれない情熱を物語っていた。
「……ねえ、拓人。……こっち向いて?」
「…………無理。」
彼は結局、最後まで視線を合わせようとはしなかった。
けれど、うさみの肩に顔を埋めたまま、その白い生地を力任せに握りしめる。
理性が崩壊した果てにある、剥き出しの独占欲。
拓人は、言葉を捨てた代わりに、その熱い身体すべてを使って、うさみを「自分だけのもの」として、暗闇の中へと引きずり込んでいった。