【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第7章 5
「……爆豪くんとは……本当に、ただの……そういう関係だったの。なのに、もしかしたら……彼、私のこと、好きなのかもしれない……。」
透は泣きそうな目で轟を見つめた。
「もしかしたら」――そのあまりにも脆い確信のなさに、轟は静かに目を伏せる。
「お前はどうなんだ。」
「わからない……怖い……。今が崩れるのが、怖いの……。」
轟はポケットに手を入れたまま、淡々と、けれど核心を突いた。
「崩れるとは限らないだろう。」
至極真っ当な指摘だった。だが、一度壊れた経験がある透にとって、その「万が一」に踏み出す勇気は、今の関係を維持するよりもずっと重い。
轟はふっと目を細めた。
「あいつも不器用だからな。……俺も人のことは言えないが。」
夕陽が沈みかけていく。橙から紫へと溶けゆく空を背に、彼は呟いた。
「聞かせてくれて、ありがとう。」
轟にはわかっていた。「怖い」と震える透の心は、爆豪を失いたくないと願う切実な愛ゆえに生まれているのだと。透も爆豪も前に踏み出す勇気がないだけだ。
二人はしばらくその場に立ち尽くしていた。どちらも動かず、沈黙だけが降り積もる。やがて、先に口を開いたのは轟だった。
「パトロール、もう少し回るのか?」
「ううん、これから帰る……。」
「送るよ。」
透はその好意に甘えることにした。まとまらない気持ちを抑えるために、まだ誰かと話していたかった。