【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第7章 5
夕暮れの商店街に、乾いた風が吹き抜ける。八百屋の軒先で、季節外れの風鈴がからんと虚ろに鳴った。
黙り込んだアキを見て、轟は僅かに視線を落とす。
「別に、責めているわけじゃない。ただ……」
言いかけて、彼は一度口を閉ざした。左手の炎はもう完全に消えている。
「あいつと……付き合っているのか。」
「……付き合ってないよ。」
透は轟の顔を見ることができなかった。
数秒の重苦しい沈黙が、二人の間に横たわる。
「付き合っていないのに、泊まるのか。」
自分を好いてくれた、この潔白な男に、己の醜い面を暴かれている。指先が微かに震えた。
「……ごめん。」
謝罪を口にした透に、轟は僅かに目を見開く。
「謝ることじゃない。……だが、俺が告白した時、お前は断った。それは覚えている。」
一歩、距離が詰められる。
「それでも、爆豪とはああいう関係なんだな。」
夕陽に照らされた轟の横顔は、冷徹なほど美しく、そして深く傷ついていた。
「爆豪くんとは付き合ってない……。ただの、利害が一致しただけの関係。……轟くんを傷つけるかもしれないって配慮できなかった。私が、悪いから…」
利害の一致。その冷たい言葉を噛みしめるように、轟は黙り込んだ。夕陽が二人の影を長く、歪に引き延ばしている。
商店街の店じまいのシャッターが、ガシャガシャと重い音を立てて閉まっていく。それはまるで、透の逃げ場が失われていく合図のようだった。
「……お前らしいな、そういう言い方。」
轟は静かに息を吐いた。
「自分が悪い」と認め、すべての責任を背負うことで、一番大切な本心に触れさせまいとする。そんな透の臆病な逃げ方を、彼は知っていた。
「俺はまだ、お前が好きだ。それは変わっていない」
真っ直ぐな瞳が、透を射抜く。
「だから――お前の口から聞きたい。本当のことを。」