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【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】

第7章 5



並んで歩く二人の間に、会話は少なかった。だが、居心地の悪い沈黙ではなかった。
街灯がぽつぽつと灯り始める頃、轟が前を向いたまま言った。

「俺は、お前に無理に気持ちを変えろとは言わない。でも、嘘だけはつくな。自分にも、周りにも。」

それは忠告であり、好いた女性への最後の誠実さだった。



やがて辿り着いたアパートの前。轟が足を止め、透の目を真っ直ぐに射抜いた。

「もし俺が……爆豪と同じような関係になりたい、と言ったら、どうする?」

その問いに、透の思考が瞬時に凍りつく。
頭の中を巡るのは、自分を優しい目で見つめていた爆豪の顔だった。

山吹色の瞳が、大きく揺れる。答えは、最初から決まっていた。
透の目から、大粒の涙が溢れ出した。

「……ごめん……轟くん……。私……好きな人が、できた……ごめん。……あの時の告白、本当に嬉しかった。ありがとう……。」

震える声での返事。轟は、その涙を見ても動じなかった。いや、動じないように己を律していた。

「そうか。」

一言だけ。それだけで、彼の中の恋が静かに終わりを告げた。空を見上げれば、星が瞬き始めている。
どこかスッキリとした表情で微笑む。

「泣くなよ。」

そう言って、轟の右手――温かい方の手が、透の頭にぽんと乗せられた。不器用な、一度きりの、決別の優しさ。

「ちゃんと伝えろよ。今度こそ。」

「うん……ごめん……気づかせてくれて、ありがとう……。」

透は溢れる涙を必死に拭う。その頭から手を離し、轟は一歩、距離を置いた。

「謝るな。……俺は、大丈夫だ。」

大丈夫なわけがなかった。失恋した直後に笑える人間などそういない。けれど、轟焦凍という男は、その痛みさえも自分一人で抱えていく強さを持っていた。

「じゃあな。鍵、ちゃんとかけろよ。」
彼は背を向けた。角を曲がるまで一度も振り返らなかった。

透は、夜の帳が下りた街角で、彼が残した“自分の本当の気持ち”を抱きしめたまま、立ち尽くしていた。

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