【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第4章 0.5
タクシーの後部座席、透は爆豪の肩に頭を預けたまま半分眠りかけていた。白い髪からふわりと甘いシャンプーの香り。運転手はチラとだけこちらを見て、そのまま発進した。
窓の外を睨みつけている——ように見せかけて、ガラスに映る透の寝顔を眺めていた。
それから10分後。
「おい。着くぞ、起きろ。」
肩を揺するが反応が鈍い。
「チッ……しょうがねぇな。」
ホテルに着いたとき、ロビーはすでに深夜の静けさに包まれていた。人の気配もほとんどなく、落ち着いた照明だけが高級感のある空間を淡く照らしている。
フロントでチェックインを済ませると、爆豪は手早くツインのキーを受け取り、そのまま透を支えてエレベーターへ向かう。
十二階に着いて廊下へ出ても、透の足取りはおぼつかない。まともに歩けず、ほとんど体を預けるような状態だった。
爆豪はそのまま抱えるように支え、部屋へと向かった。静かな廊下に、二人の足音だけが小さく響いていた。
カードキーをかざし、ドアが開く。
広くはないが清潔なツインルーム。ダブルベッドが二台、間接照明がベッドサイドを柔く照らしている。
爆豪は透をなんとかベッドの端まで運び、そこでようやく一息ついた。
ネクタイを引っ張って緩めながら、ベッドに倒れ込みそうな透を見下ろした。
「ほら、靴脱げ。水持ってきてやるから——」
言いかけた瞬間、透の腕が爆豪の袖を掴んだ。
「…いかないで。」
泥酔しているからか、幼子のように甘えるような声で呟く。
掴まれた袖を見て、それから透の顔を見た。山吹色の瞳は潤んで焦点が合っていない。
喉仏が一度上下した。
「……。」
数秒、黙ったまま立ち尽くす。振り払えばいい。ただ水を取ってくるだけだ。——だが、指が離せなかった。
舌打ち一つ。透の横たわるベッドの端に腰を下ろし、上着だけ脱いでシャツの袖を捲った。
「わーったよ。どこにも行かねぇから、とりあえず横になれ。」
声は低く、ぶっきらぼうだったが、そこに棘はなかった。
深夜二時のホテルの一室、普段より近い距離感と甘い雰囲気に飲まれそうになる。