【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第4章 0.5
時計の針は深夜一時を回っていた。カクテルグラスの結露が木のカウンターに小さな水溜まりを作っている。
ふと、思い出したように透はスマホの時間を確認する。
「ぁ…終電、忘れてた。」
一瞬の間。それから爆豪の深いため息。
「ハァ——……お前マジで計画性ねぇな昔っから。」
呆れ顔ではあるが、その声にはどこか諦めに似た柔らかさが滲んでいた。学生時代から何も変わっていない——そう思うと、不思議と腹も立たないらしい。
「はは…ちょっとお手洗い行ってくるね。」
透が椅子から立ち上がると、アルコールが急即に回ってグラリと視界が歪み、体がよろめく。
反射だった。考えるより先に体が動いていた——椅子を蹴るように立ち上がり、よろめいた透の肩を片手で掴む。
「おい、しっかりしろ。」
ぐっと引き寄せる形になって、至近距離で山吹色の目を覗き込む。
「お前、顔真っ赤じゃねぇか——水頼むぞ。」
バーテンダーはすでに察していたようで、何も言わずピッチャーからグラスへ水を注いでいた。
爆豪に肩を支えられた透との距離は、互いの呼吸が感じられるほど近い。酒と、微かな火薬の残り香——彼の個性由来のニトロが混ざった匂い。
爆豪にしがみついたまま、呟く。
「爆豪くん…甘くて、いい匂い…。」
一瞬、体が固まった。
「——は?」
ボンと顔全体が赤くなる。空いた手で透の頭をぐいっと押して引き剥がそうとしたが、力加減がぎこちない。
「酔っ払いが気持ち悪ィこと言ってんじゃねぇ! 水飲め水!」
差し出された水のグラスを透が受け取れるかどうか怪しい状態だった。しがみつかれたままの爆豪は片腕が塞がり身動きが取れず、もう片方の手で後頭部をがりがりと掻いた。明らかに動揺している。