【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第4章 0.5
「……サイドキックは。」
「いないよー、なんせ最近だからね。」
グラスを傾ける手を止めて、爆豪は怪訝そうな顔をした。
「一人かよ。」
短い一言に含まれた意味は重かった。独立したてのヒーローが単独で回すことのリスクを、誰よりも知っている男の声だった。
「ヴィランの対応、災害救助、事務処理——全部一人でやってんのか?」
「ん、まぁね…まぁ小さい事務所だからそんな困ってないよ。近隣事務所の協力もあるし。」
グラスを一気に煽った。空になったグラスをカウンターに置く音が妙に大きく響いた。
「困ってない、ね。」
透の顔を見もせず、バーテンにおかわりを頼む。三杯目。
「そういう奴が一番危ねぇんだよ。無理してる自覚がねぇパターン。」
その言葉には実感がこもっていた——かつて自分自身がそうだったから。限界まで一人で抱え込んで、潰れかけた男が言うと、ただの説教とは重みが違った。
「あ、でも募集は出してるよ?今度面接する。
爆豪くんこそ、サイドキック集まってないんでしょ?」
透はにやりと笑う。
「図星を突かれたのか、一瞬だけ目が泳いだ。」
「——っ、集まってねぇんじゃなくて、選んでねぇだけだろうが! 俺のレベルについて来れる奴がいねぇんだよ!」
声のボリュームが上がりかけて、バーの静けさを思い出したのか咳払いをひとつ。
実際のところ、大・爆・殺・神・ダイナマイトのサイドキック応募倍率は凄まじいものがある。しかし同時に、面接で爆破されて帰ってきたという噂も絶えない。
にやつく透から顔を逸らし、グラスの水滴を親指で拭った。
「……面接ね。変なの採用すんなよ。」
ぼそっと付け足すように。
「あと、ちゃんと休め。倒れてからじゃ遅ぇぞ。」
珍しく心配を表に出す爆豪に透は少し驚くが、素直に受け取る。
「ん、気をつけるよ。」
ふん、と鼻から息を抜いた。それだけで満足したらしい。