【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第4章 0.5
「あぁ、それ、譲り受けたの。だからあそこの管轄は今は私の。」
グラスから手を離した。赤い瞳が真っ直ぐ透を捉える。
「譲り受けた? ——あのオッサン引退したのか。」
バーテンダーに軽く目配せして、おかわりを頼む。
「半年前ってことは結構急だったろ。引き継ぎとか面倒だったんじゃねぇの。」
言葉は素っ気ないが、聞きたいことは山ほどあるという顔をしていた。
独立という選択肢を選んだ同級生——かつて同じ学舎にいた人間が、今どんな景色を見ているのか。それを確かめたいのかもしれない。もっとも、本人にそんな自覚があるかどうかは定かではないが。
「急に余生を奥さんと田舎で過ごすって言い出して…。手続き多くて意外と面倒だった笑
おかげで、自分、事務作業苦手なんだなーって気づいたよ。」
透は笑いながらジントニックを一口。
ハッと短く笑った。嘲りではなく、どこか懐かしむような響き。
「だろうな。お前がデスクに座って書類とにらめっこしてる姿なんざ想像つかねぇわ。現場でバシャバシャやってる方がよっぽど似合ってンだろ。」
二杯目のジントニックが爆豪の前に置かれた。今度はゆっくりと口に運ぶ。店内の奥で飲んでいた客が会計を済ませて出ていき、二人きりになった。バーテンは空気を読んだのか、グラスを拭く手元に意識を落としている。