【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第7章 5
鉄錆の匂いが充満する中、透は呆然と立ち尽くしていた。
足元には、自分が放った血の溜まり。指先を汚す粘ついた赤に、正気を取り戻した彼女を絶望が襲う。
視線を感じて、透は顔を上げた。
血の海に沈む爆豪。その瞳には、今まで向けられたことのないような、言葉にならない衝撃が宿っていた。
さらに、騒ぎを聞きつけて到着した轟もまた、その惨劇の王座に立つ透を、動けずに見つめていた。
「……あ……見、ないで……」
見られたくなかった。一番見られたくなかった、醜悪で、壊れた自分。
やっと、踏み出す勇気を手にしたばかりだった。
雄英の誰もが知る「クールで余裕のある自分」を、必死に演じてきたはずだった。なのに、最も見せたくない部分を、最も失いたくない男の前に晒してしまった。
「……っ……、爆豪……くん……。」
彼が憧れたヒーロー像からも、彼が好いていたかもしれない自分からも、永遠に逸脱してしまった。
透はパニックに陥り、震える手で顔を覆う。
激しい失血と、精神の崩壊。
視界が急激に暗転し、二人の手が届く前に、透の身体は糸が切れた人形のように、自らが作り出した血の海へと崩れ落ちた。