【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第7章 5
心臓を狙った一撃。透が目を閉じたその時、視界を埋め尽くす橙色の閃光が、すべてを薙ぎ払った。
「――死ねえぇぇぇぇえ!!!」
聞き慣れた怒号。近くをパトロールしていた爆豪勝己だ。
「ダイナマイト!……っ、ダメ、逃げて……!」
「黙ってろクソが! てめーは引っ込んでろ!」
爆豪は透を庇いながら戦うという、致命的な不利を強いられていた。ヴィランは執拗に弱った透を狙う。
爆豪はその軌道に己の肉体を割り込ませ、爆破で応戦するが、超高速の刺突が爆豪の肩を、そして胸から腹にかけてを深く貫いた。
「ぐっ……!」
鮮血が透の頬に飛ぶ。膝を突いた爆豪の脇腹に、追撃の蹴りが食い込む。
「が、はっ……!」
鈍い音が響き、爆豪の身体が大きく吹き飛んだ。壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。
朦朧とする意識の中でなお、爆豪は彼女を案ずるように、震える手を伸ばした。
その瞬間、透の中で、何かがブツリと音を立てて千切れた。
過去のトラウマ、積み上げた欺瞞、幸せへの予感。すべてが「爆豪を失う」という純粋な恐怖に塗りつぶされる。
「あ……ああ……」
山吹色の瞳から光が消え、底の見えない赤黒い澱みが広がる。
水がないのなら、出せばいい。
透は自らの脇腹の傷口に、震える指を突き立て、抉るようにして血を引き摺り出した。
「透……、やめ……ろ……」
爆豪の掠れた声は、もう届かない。
傷口から溢れ出した鮮血が、生き物のように地面を細く這う。
それは逃走を図るヴィランの両足を、瞬時に、かつ強固に拘束した。
「な、なんだこれは……離せ!」
「……殺す。」
透の口から、冷え切った無機質な声が漏れる。彼女が拳を握り込むと、血の蔦が凄まじい圧力で収縮した。
逃げ場を失ったヴィランの四肢を、胴を、首を、万力のような力で締め上げる。
――メキ、メキ。
骨の砕ける嫌な音が、静寂の廃墟に響き渡った。
「ぎ、ぎゃあああ!!」
悲鳴は、瞬時に断ち切られた。抵抗する間もなく、ヴィランの体は歪な塊へと捻り潰される。