第4章 優しさの押し売り
「あーあ、どっかに『身長180センチ以上、顔は国宝級、私を世界一甘やかすためだけに生きてて、かつ他の女には1ミリも興味がないイケメン』、落ちてないかなあ」
ベンチに寝転がり、私はいつもの妄想に、自分でも無意識のうちに新しい条件を付け足していた。
「あ、アズサさん。それ完全に、俺への当てつけですか?」
呆れたような、でもどこか嬉しそうな声。
振り返らなくてもわかる。結城くんだ。
彼はいつものように私の横に立つと、ライターで煙草に火をつけた。
「は? なんであんたへの当てつけになるわけ?」
「いや、だって『他の女に興味がない』って。
俺、他の部署の女の子にめちゃくちゃ親切にしてるの、アズサさんに見られてましたもんね? 熱い視線だったなー」
「……見てないし。興味ないし」
私は空に視線を戻す。
そう、今朝、結城くんが他部署の後輩の女の子の重い荷物をサッと持ってあげて、何やら楽しそうに談笑しているところを、私はバッチリ目撃していた。
「あー、あの目は絶対に見てましたね。
不機嫌オーラが漏れてますよ」
結城くんは笑いながら、私の寝転がるベンチの端に腰掛けた。
相変わらず、座る距離が近い。
「別に。あんたが誰に優しくしようが、あんたの自由でしょ。
ほら、早く煙草吸って仕事戻りなさいよ」