第7章 第57回壁外調査――崩壊
壁をくぐると、そこには英雄の帰還を待つ群衆……ではなく、冷ややかな視線と罵声が待っていた。
「おい見ろよ、あの死人みたいなツラ」
「結局、税金使ってあんなに死なせて、何一つ成果なしかよ」
昨日、私たちが身分を隠して歩いた同じ道。
あんなに甘かった菓子の匂いも、ペトラ先輩と笑い合った空気も、今はすべてが泥のように濁って見える。
「……ノア、聞かなくていい。今はただ、目を閉じていなさい」
ハンジさんの手が、私の耳を塞ぐように添えられた。
けれど、私の胸元で冷たく光る青い石だけは、隠しようもなかった。
それは、果たせなかった約束の証。
色彩を失った私の世界は、赤く染まったあの日から、二度と元に戻ることはないのだと、突きつけられているようだった。