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色彩を拒んだ瞳に、最強の影を

第8章 再編、そして偽りの王都


出発の朝、どんよりとした曇り空の下で馬の準備を整えていると、背後から僅かに重心の偏った足音が聞こえた。

振り返ると、そこには私服姿の兵長が立っていた。

杖こそついていないが、時折眉間に寄る深い皺が、ミカサを助けた際に痛めた足の具合が万全でないことを物語っている。

兵長とエルヴィン団長は、エレンの召喚に応じて別動隊として王都へ向かう。

実行部隊としてストヘス区へ先んじる私たちとは、ここで一時的な別れとなる。

「……ハンジ。こいつを頼む」

兵長はハンジさんに短く告げると、私の前で足を止めた。

その眼差しは、巨大樹の森で私を高い枝の上へ運んだ時と同じ、鋭く、けれどどこか祈るような静けさを湛えていた。

「ノア。お前は作戦で王都へ行くんだろ。……あっちで会えるかも分からねぇが、分かっているとは思うが、死ぬなよ」

「……はい、兵長も」

私は、短く答えるのが精一杯だった。

「死ぬな」という言葉が、あの日失った仲間たちの顔を呼び起こす。

ペトラ先輩と交わした次の約束が、ネックレスの青い石を通して、今も胸の奥で燻っている。

「……」

兵長は言いたいことを言い終わったのか、一度も振り返ることなく歩き出した。
少しだけ引きずるような足音が、静かな石畳に響き、遠ざかっていく。

(……次こそは、誰も失わない。……絶対に)

私は、胸元のネックレスを服の上から強く握りしめた。

私たちが向かう先は、人類の敵が潜む、偽りの平和に満ちた王都・ストヘス区だ。
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