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色彩を拒んだ瞳に、最強の影を

第7章 第57回壁外調査――崩壊


気づけば、私は揺れていた。

巨大樹の森で、ペトラ先輩のあのネックレスが赤く染まるのを見た後、私の意識は深い霧の中に消えた。

どうやって森を抜けたのか、誰が私を馬に乗せたのか、何一つ思い出せない。

ただ、背中越しに伝わる一定の体温と、絶え間なく響く馬の蹄の音だけが、私がまだこの地獄に繋ぎ止められていることを教えていた。

「……あ、……」

掠れた声を出そうとして、喉が焼けるように痛むことに気づく。

「無理に喋らなくていいよ。……もうすぐ、壁の中だ」

耳元で聞こえたのは、ハンジさんの声だった。

いつもなら耳を塞ぎたくなるほど騒がしい彼女の声が、今はひどく低く、湿り気を帯びていた。

私はハンジさんの前に抱えられ、彼女の腕に包み込まれるようにして馬に乗っていた。

「……リヴァイに頼まれてね。君を頼むって。あいつ、ミカサを助けた時に足をやっちゃって……。自分の馬に乗せるのは危ないと判断したんだろう」

ハンジさんはそれだけ言うと、私の頭を自分の胸元にそっと引き寄せた。

視界の端、少し先を走る兵長の背中が見える。

その背中は、昨日街で見上げた時よりもずっと小さく、けれど耐え難いほどの重荷を背負っているように見えた。

彼が守ろうとした精鋭たちは、もう一人もいない。
生き残ったのは、兵長が「休んでいろ」と突き放した、欠陥品のような私だけだった。
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