第6章 つかの間の休日
彼女の背中が見えなくなるまで見送った後、私は部屋の扉を閉めた。
二つ並んだベッド。一つは私が使い、もう一つは、今も主がいないまま綺麗に整えられている。
(……そういえば、前の同室の人が戦死してから、もう一ヶ月か)
かつてここにいた少女の名前も、もう思い出せない。
ただ、彼女の私物が片付けられた後の、あまりにも潔すぎる空席の光景だけが脳裏に焼き付いている。
調査兵団において、死は日常だ。誰かが死ねば、また次の消耗品がこのベッドを埋めるだけ。
(……もうすぐ、新しい誰かが来るのかな)
そう思いながら、私は手にしたネックレスをそっと首にかけた。
鏡の中に映る、青く光る石。
それは、色彩を欠いた私の世界にペトラ先輩が無理やり残していった、鮮やかな呪い。
「……食べに行きましょうね。約束ですから」
暗い部屋の中で、私は誰に聞かせるでもなくそう呟いた。
その未来が、巨大樹の森で永遠に失われることを、今の私はまだ知らない。