第5章 春の終わり、あるいは爆弾
翌朝。
喉を掻き切るようなハンジさんの絶叫で、私の眠りは強制的に引き剥がされた。
どうやら私は途中で寝てしまい別の部屋に運んでもらったらしい。
「……何、今の……」
隣の部屋から飛び出してきたエレンと視線がぶつかる。状況を把握するより先に、私たちは声のした方へと走り出していた。
現場には、無惨に蒸気を上げて消えゆく二体の巨人と、崩れ落ちるハンジさんの姿。
そして、灰色の空の下、すべてを見通すような冷徹な瞳をした男――エルヴィン・スミス団長が立っていた。
「……団長」
私の呟きに、団長はゆっくりとこちらを振り返った。
「君には何が見える? ……エレン。そして、ノア」
「……え?」
困惑するエレンの肩越しに、団長の視線が私を射抜く。
「敵は、何だと思う?」
その問いは、単なる犯人捜しの質問ではない。もっと奥の、血の匂いがするような真実を暴こうとする響きがあった。
「……何も。ただ、無価値な悪意に壊された残骸だけが見えます。……犯人が誰であれ、私にとっては守るべきものを壊す敵でしかありません」
自分の言葉が、ひどく冷たく現場に落ちる。
団長は一瞬だけ、微かに口角を上げたように見えた。
「そうか。……リヴァイが君を連れてきた理由が、少し分かった気がするよ」
団長はそれだけ言うと、エレンに背を向けた。
「……ノア。君は、その冷たさを忘れないでいてくれ。いずれそれが、君自身を助けることになるかもしれない」
意味深な言葉を残して去っていく背中。
この人はいつもそうだ。
目の前の人間を見ているようで、その実、もっと遠くにある残酷な未来だけを見据えている。
私の空っぽな内側を暴こうとするその鋭い光が、今はただ、ひどく恐ろしかった。
私はただ、消えゆく巨人の蒸気の中に、これから始まる巨大な
嵐の予感を感じて、無意識に自分の腕をさすっていた。