第5章 春の終わり、あるいは爆弾
「下手にいじくりまわされて死ぬかもな、お前。エレンよ……」
やっと掃除もひと段落つきリヴァイ班の面々で紅茶を飲んでいるとき、リヴァイ兵長の冷徹な声が、紅茶の湯気越しに響く。
その言葉の重みにエレンが息を呑んだ、その瞬間だった。
バタン、と勢いよく食堂の扉が開く。
「こんばんは~リヴァイ班の皆さん。お城の住み心地はどうかな?」
嵐のように現れたハンジさんが、私たちに問いかける。
「……ハンジさん。夜中に騒ぐのはやめてください。兵長の眉間の皺が増えます」
「おや、#NAME1! すっかりこのメンバーに馴染んだね、気づかなかったよ!」
抱きつこうとする手をすり抜けて、私は自分のカップを避難させた。
彼女とは、リヴァイ班に入る前から実験の記録係として腐れ縁のような付き合いがある。変人扱いされる彼女の熱量は、色彩を欠いた私の世界に無理やり入り込んでくる、数少ない「熱」の一つだった。
その夜、ハンジさんの独壇場となった講義は数時間に及んだ。
深夜。
ランプの火が小さくなる頃、エレンの表情はすでに情報の濁流に飲まれて魂が抜けかけている。
「……スー……、……」
不意に、エレンの視界の端で私の頭がこてんと揺れた。
「……えっ。#NAME1さん、寝て……?」
「あはは、ごめんごめん! ノアは私の無茶な実験に付き合って、数日徹夜することもあるからね。電池が切れるとこうなっちゃうんだ」
ハンジさんは優しく、寝落ちした私の肩に自分の上着をかけた。
「エレン。彼女は口も悪いし冷たく見えるだろうけど、実際はこうして誰かの無茶に最後まで付き合っちゃうような、お人好しな女の子なんだよ。……まぁ、本人は全力で否定するだろうけどね」
エレンは、初めて見る「無防備な先輩」の姿に、言葉を失っていた。