第5章 春の終わり、あるいは爆弾
喉の奥が焼けるような疾走の末、私たちはトロスト区へと辿り着いた。
鼻を突く巨人の死臭と、立ち込める白濁とした蒸気。
破壊された街並みは、色彩を欠いた私の視界の中でも、ひと際無惨に映った。
――間に合わなかった。
そう吐き捨てそうになった私の目に、異様な光景が飛び込んできた。
崩れた瓦礫の山。
その中心で力尽きた巨人の、焼け落ちるうなじの中から。
泥と返り血に塗れた、一人の少年が引きずり出されていた。
「……巨人の中に、人間……?」
独り言は、周囲の喧騒にかき消された。
巨人は殺すべき敵で、人間は食われるだけの犠牲者。
その絶対的な境界線が、どろどろと溶けていくような不快感。
呆然と立ち尽くす私を置き去りにして、リヴァイ兵長が馬から飛び降りる。
その背中は、いつになく鋭い殺気と、得体の知れない期待のような光を放っていた。
「……おい、ガキども。これはどういう状況だ」
兵長の冷徹な声が、少年に突き刺さる。
私はただ、馬の背で震える指先を握りしめていた。