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色彩を拒んだ瞳に、最強の影を

第4章 春を待つ足音


霜の降りた訓練場へ足を踏み入れる。

刺すような空気の冷たさに肩をすくめると、案の定、聞き慣れた皮肉が飛んできた。

「おいおい、昨日あんなに兵長を煩わせておいて、随分と余裕なツラだな。……死に損ないが、張り切りすぎてまた他人の手を煩わせるんじゃねぇぞ」

舌打ち交じりに言い放ったのは、オルオ先輩だ。

その言葉の端々に含まれた「余計な心配」が透けて見えて、私はますます眉間の皺を深くする。

「……別に、張り切ってなんていません。予定通りに来ただけです」

「可愛くねぇのは相変わらずだな。ほら、エルドからだ」

彼はぶつぶつと文句を並べながら、湯気の立つ水筒を無造作に放り投げてきた。

慌てて掴み損ねそうになりながら受け取ると、掌からじわりと熱が伝わる。

「……オルオ、あんたが渡すと喧嘩売ってるみたいに見えるからやめなさいよ。……おはよう、ノア。顔色が悪いけど、ちゃんと眠れた?」

ペトラ先輩が困ったように笑いながら歩み寄ってくる。

「おはようございます。……はい、それなりに」

嘘をついた。

実際は、あの人の「俺は死なない」という言葉が耳の奥にこびりついて、ひどく寝付きが悪かったのだ。

静かに整備を続けるグンタ先輩の視線と、エルド先輩の穏やかな微笑み。

冬の終わり。

まだ色彩は戻らないけれど、リヴァイ班という熱に囲まれてしまった私の日常は、望まない方へと少しずつ傾き始めていた。
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