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蝕に攫われた春 【十二国記 延王】

第3章 玄英宮に響く歌声


「――やはり、ここにおいででしたか」




冷徹な声と共に現れたのは朱衡だった。
いつもなら街のどこに消えたか分からず、捜索隊を出す羽目になる「放蕩コンビ」が、今は必ずと言っていいほどの側にいる。



「げっ、朱衡。もう見つけやがったのか」


「居場所が分かりやすくて助かりますよ、主上。……様。申し訳ありません。このバカたちが、とんだご迷惑を……」


「いえ! 私は楽しいですから……」




恐縮するに、朱衡は珍しくふっと口角を上げた。




「……あなたには感謝しているのです。おかげで二人の捜索や捕獲の手間が省けました。もしよろしければ、このまま歌で彼らを足止めしておいていただけますか? その間に、逃げられないよう周囲を固めますので」



「捕獲って言うな、捕獲って!」



尚隆の抗議を無視し、朱衡は深々と一礼して去っていった。
それを見送ったは、くすくすと笑い声を漏らす。



「ふふ、朱衡様にまで頼まれてしまいましたね。……では、お二人がお仕事に戻りたくなるような、元気が出る歌を歌いましょうか?」


「おいおい、仕事に戻りたくなるやつじゃなくて、帰りたくなくなるやつを頼む」


「同感。……でも、が歌うなら、なんでもいいや」




期待に満ちた二人の視線を浴びて、は晴れやかな顔で息を吸い込む。


雁州国の王と麒麟を骨抜きにする歌声が、今日も玄英宮の空に響き渡ろうとしていたーー。


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