第3章 玄英宮に響く歌声
尚隆と「歌の約束」を交わしてからというもの、の玄英宮での日々はいっそう色鮮やかなものとなった。
彼との再会から三日後。
ようやく「お役目」から解放されたという少年、六太との対面も果たした。
「……ええっ!? 六太君が、この国の麒麟……延台輔なんですか!?」
「なんだよ、その『信じられない』って顔は。これでも一応、尚隆を選んだ偉い麒麟なんだぞ」
生意気そうに笑う目の前の少年が「神獣」であると知った時の衝撃は、尚隆が王だと知った時とも引けを取らなかった。
『台輔』と皆と同じように敬称で呼ぼうとする彼女に、「名前で呼んでよ」と六太は言い含めた。
以来、六太もまた彼女の歌声に魅了された一人となり、事あるごとにの元へふらりと現れるようになった。
「あーあ。今日も朱衡の顔は怖かったな」
「全くだ。あいつの説教を聞いてると、耳の中にカビが生えそうだ」
初夏の風が吹き抜ける午後。
見渡しのいい庭園にはこの国の頂点に立つ二人の男が、これ以上ないほどだらしなくくつろいでいた。
「尚隆様、六太君。またそんなことを……。朱衡様が必死に探していらっしゃいましたよ?」
呆れ顔で冷たい茶を運んできたに、尚隆は「おっ、待っていた」と嬉しそうに目を細める。
「いいんだよ。あいつには『休息も仕事のうちだ』って言ってある。なあ、六太」
「そうそう。俺たち、の歌を聴かないと、明日から国を動かす元気が沸いてこない病気なんだ。……なあ、なんか一曲歌ってくれよ」
二人がこうして彼女の元へ入り浸るようになったおかげで、宮廷内にはある変化が起きていた。