第2章 再会を待つ風
自分を助けてくれたのは、王様に仕える凄い役人なのだとばかり思っていた。
けれど、目の前の男は役人どころかこの巨大な宮殿の主であり、この国そのものを統べる「王」だと言う。
「うそ……風漢さんが、延王、様……?」
戸惑い立ち尽くす。
そんな彼女の反応を楽しむかのように、尚隆は「そんなに驚くことか?」と、愉快そうに笑声を上げた。
呆然と立ち尽くすの元へ、さらに追い打ちをかけるような声が届く。
「ようやく公務が片付きましたのね、主上」
やってきたのは玉葉だった。
彼女はどこか揶揄うような微笑みを浮かべて尚隆を見遣る。
「ああ。半月も執務室に缶詰にされて、今にも干からびるところだったぞ。朱衡の奴、あいつは絶対に人間じゃねえ。鬼か何かだ」
尚隆が肩を回しながら軽口を叩く。
そのやり取りを見ていたは、震える声で玉葉に問いかけた。
「玉葉さん……本当に、風漢さんが……この国の、王様……なのですか?」
玉葉は少しだけ悪戯っぽく微笑みむと深く頷いた。
「はい。主上から『自分の正体は、機が熟すまで伏せておくように』と厳命されておりましたので。ようやくお話しできて、私も肩の荷が下りましたわ」
その言葉が、の背中を冷たく走った。
この半月、彼女は女官たちからこの世界の仕組みを教わってきた。
王とは麒麟を通して天意を受けた唯一無二の存在であり、その尊さは神にも等しいこと。
そして、王に対して無礼を働くことがどれほどいけない事で、身を滅ぼす事になるか。
(私、あの日……延王様に向かって、なんて態度を……!)
「ご、ごめんなさい! ――いえ、申し訳ございません!」
血の気が引いたはその場に膝をつき、必死に頭を畳に擦り付けようとした。
妓楼での癖で、体が勝手に処罰を恐れて震え出す。
「顔を上げろ。そんなにかしこまるな」
不意に頭の上から降ってきた声は、驚くほど柔らかかった。
視界に上等な衣の裾と、無造作に踏み出された足が見える。
尚隆は彼女の前にしゃがみ込むと、戸惑うの肩を大きな手で包んだ。