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蝕に攫われた春 【十二国記 延王】

第2章 再会を待つ風


翌朝、柔らかな朝陽に包まれては目を覚ました。
女官たちに手際よく身なりを整えられ、広間に用意された朝食の席に着く。
今日もまた、テーブルには食べきれないほどの贅沢な料理が並んでいた。



「……あの、今日も皆さん、一緒に食べていただけますか?」



がそう声をかけると、昨夜からいた女官たちは「喜んで」と顔を綻ばせた。
初めて見る若い女官は「えっ……」と戸惑っていたが、先輩である玉葉が優しく頷くのを見て、おずおずと席についた。



「美味しい……。日本で食べていたものとは少し違うけれど、すごく優しい味がします」


「それは北方の特産を使った粥でございます。お体に障らぬよう、料理長が工夫を凝らしたのですよ」



そんな会話を楽しみながら、賑やかな朝食の時間は過ぎていった。
だが、食事が終わると特にやる事もなく、暇を持て余してしまう。
妓楼では掃除や歌の練習、そして客の相手と常に心も体も休まる暇がなかったのだ。



「玉葉さん。私は、ここで何をすればいいのでしょうか……? お掃除でも、お洗濯でも、何でも手伝います。ただ座っているだけなのは、その……落ち着かなくて」



彼女の言葉に玉葉は困ったように微笑みを浮かべた。



「様。あなた様は、ただ健やかにお過ごし下されば、それで良いのです。心と体をお休めいただくこと、それが主上からのご命令なのですから」


「そんな……」



玉葉が用事で席を外すと、部屋には数名の若い女官だけが残った。
手持ち無沙汰なは、ずっと胸に引っかかっていたことを聞いてみることにした。



「あの……風漢さんにお礼を言いたいのですが、やはりお会いするのは難しいのでしょうか? 私をここへ繋いでくれた、背の高い男の方なんですが……」


「……フウカン、様……?」


女官たちは顔を見合わせ、首を傾げた。
王宮の官吏にそのような名の者は聞き覚えがないようだった。



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