第2章 再会を待つ風
朱衡が退室したのと入れ替わるように数名の女官が静かに入室し、の前で深々と頭を下げた。
「流花様。これからあなた様のお世話をさせていただきます、玉葉(ぎょくよう)と申します。何かご不便なことがあれば、何なりとお申し付けくださいませ」
中心に立つ落ち着いた雰囲気の女官・玉葉の挨拶に、は少し気圧されながらも丁寧に頭を下げ返した。
「……流花は、妓楼での名前で……と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
「様、素敵なお名前ですね。」
それからは、まるで夢の中にいるような時間だった。
湯殿へ案内されると香草の清々しい香りが満ちる広い浴槽があった。
こびりついた汚れも、忌まわしい記憶もすべて洗い流すように、女官たちが優しく丁寧に身を清めてくれる。
用意された衣は、妓楼で着せられていた派手で扇情的なものとは対照的なものだった。
「……とても、綺麗。でも、私には勿体ないくらいです」
淡い萌葱色の絹地は、肌を滑るように柔らかい。
装飾も控えめながら、一目で品の良い上等なものだと分かった。
夕刻。
広々とした食卓には、見たこともないほど豪華な料理が並べられていた。
温かな湯気を立てる肉料理や、瑞々しい果物に芳醇な香りのスープ。
しかし、一人でその席に腰掛けたは、箸を手に取ろうとしてふと手を止めた。
広い部屋に、自分だけの食器の触れ合う音だけが響く予感。
それは、言葉の通じない妓楼で感じていた孤独とは違う寂しさを感じた。
「あの、玉葉さん……」
後ろに控えていた玉葉が、すぐさま歩み寄る。
「……お口に合いませんか?」
「いえ、そうではなくて。……もしよろしければ、皆さんも一緒に食事をしていただけませんか?」
「え……?」
玉葉は驚いたように目を瞬かせた。