第2章 再会を待つ風
「……ここは、王宮?」
「はい。我が雁州国の王、延王が住まわれる宮殿です。あなたには、これからここでお過ごしいただきます」
は呆然と周囲を見渡した。
豪華絢爛な装飾、行き交う高潔な佇まいの官吏たち。
あんなに胡散臭い格好をしていた風漢が、これほどまでに凄い場所に仕えている役人だったなんて。
「風漢さん……本当は、すごく偉い方だったんですね」
その呟きに朱衡は一瞬だけ、何とも言えない絶妙な表情で口元を綻ばせた。
「……ええ。ある意味では、彼はこの国で最も『特別』な方だと言えるでしょうね。本来なら今すぐにでもあなたに会いたがっていたのですが……」
朱衡は宮殿の奥へと彼女を導きながら、広々として温かみのある一室の前で立ち止まった。
「しばらくは、この部屋をお使いください。着替えや食事など、身の回りの世話は女官たちに申し付けてあります。……あの方からも、あなたを誠心誠意お迎えし、手厚く世話をするようにときつく言い付かっておりますから」
「そんな……私なんかに、どうしてそこまで」
「それは、あなたが彼にとって『放っておけない特別な方』だからでしょう」
朱衡は優しく目を細め、丁寧な仕草で一礼した。
「まずはゆっくりお休みください。ここにいるものは皆仙籍に身を置いてます。言葉が通じる相手がここにいるというだけで、少しは心が休まるはずですから」
差し伸べられた朱衡の手の温かさと、言葉の通じる安堵感。
はかつてないほどの平穏を感じながら、夢にまで見た「地獄からの脱出」が現実であることを噛み締めていた。