第2章 再会を待つ風
空を駆ける風が、の頬を容赦なく叩く。
下を見ればこれまで自分がいた街並みが、小さく遠ざかっていく。
「きゃっ……!?」
必死で朱衡の腰あたりにしがみつきながら、は引き攣った声を上げた。
騎獣に乗る前、朱衡は穏やかな顔でこう尋ねてくれたのだ。
『私の前と後ろ、どちらがよろしいですか?』
出会ったばかりの男性に背後から抱きしめられるような形で乗るのには、どうしても抵抗があった。
だから「後ろでお願いします」と答えたのだが、今はその選択を心底悔やんでいた。
「あ、あの! こんな、空を飛ぶなんて聞いてません……!」
「おや、驚かせてしまいましたか? ですが、これが一番移動が早いのです。そう力まなくても、落とすなんてヘマはしませんから、ご安心を」
前に乗る朱衡の声は、この強風の中でも驚くほど涼やかに耳元に届く。
雲海の下を覗き込みあまりの高さに眩暈を覚えながら、はただ必死に彼の衣を掴んでいた。
「……?……あれは、何ですか?」
やがて、眼前に信じられない光景が広がった。
幾重にも連なる山の頂、その雲を突き抜けた先に、天を突くような巨大な楼閣や宮殿がいくつも立ち並んでいる。
陽の光を浴びて光り輝くその姿は、まさに神話の世界そのものだった。
「あれが、我々の目的地。玄英宮ですよ」
騎獣がゆっくりと高度を下げ、広い石畳の広場へと降り立つ。
朱衡は軽やかに飛び降りると、震えが止まらないを優しく抱き下ろし門番へと騎獣の手綱を預けた。