第1章 Under the rader
表示された名前は、相葉雅紀。
同じ公安に配属された、同期の相葉からだ。
「っ、相葉くんだ……」
「……無視しろ」
櫻井が松本の腰を引き寄せ、動きを止めさせない。だが、相葉は一度切れても、すぐさま二度目の着信を鳴らしてきた。緊急事態かもしれない。松本は冷や汗を流しながら、繋がったままの手で震える指先を画面に滑らせた。
「……はい、松本です……っ、」
邪魔をされて不機嫌になった櫻井が松本を丸ごと口に含んだ。
「あ、っ……」
「もしもーし? 松本ぉ? あれ、今大丈夫? なんか息上がってない?」
スピーカーから漏れる相葉の明るい声が、あまりに場違いで、それゆえに背徳感を煽る。櫻井が舌で松本の自身を吸い尽くす中、松本は歯を食いしばって必死に声を殺した。
「……大丈夫……、ちょっと、……運動、してたんだ」
「運動? こんな夜中にストイックだねぇ! あ、例の櫻井さんの件だけど、明日の朝イチで局長が話あるってさ。隣で寝てると思うけど気をつけてね。」
『櫻井さんの件』。その不穏なワードが耳に飛び込んだ瞬間、松本の背筋に冷たいものが走った。櫻井は相葉の声など聞こえていないかのように、松本を咥えながら急かすように彼を見上げている。
「……わかっ、た。……明日、局長室で……っ、」
「了解ー! じゃあ、おやすみー!」
通話が切れた瞬間、スマートフォンが手から滑り落ちた。
松本は櫻井を自分の股間から引き剥がし、部屋に再び静寂が戻る。
「……翔くん。相葉くんが、明日の朝……」
「今は、そんな話はどうでもいいだろ?」
櫻井が松本のうなじに手を回し、自分へと引き寄せる。
「……潤、俺の後ろ、めちゃくちゃにしてくれ」
櫻井の促しに従い、松本は覚悟を決めたように指を後ろの蕾に当てた。
だが、電話の向こうの相葉が放った「櫻井さんの件」という不穏な響きが、松本の公安としての本能を無理やり呼び覚ましていた。
(……見なきゃ。この人の、すべてを)