第1章 Under the rader
雨が窓を叩く、金曜の夜だった。
「……潤、今日はもう、俺の家に来ないか?」
プライベートの境界線に踏み込んだ櫻井の言葉は、熱を帯びた誘惑そのものだった。櫻井の家に着くまで、潤はこれから起きることへの期待と動揺で顔を上げられずにいた。
櫻井の自宅に入ると、リビングの明かりも点けぬまま、二人は吸い寄せられるように唇を重ねた。憧れていた翔くんの腕、その体温。松本は心臓が口から飛び出しそうなほどの高揚感に包まれていた。
「……翔くん、僕、……」
「いいんだ。今日は、お前に俺を委ねたい」
櫻井はいつもの余裕に満ちた笑みを崩さず、松本をベッドへと導いた。
ジャケットを脱ぎ捨て、松本から目を一切逸さずシャツのボタンを自分で一つ一つ外してゆく。自らのズボンのベルトに手をかけながら、櫻井はシーツの上に横たわる。櫻井は、追い詰められ始めた自分への疑念を、この濃密な快楽で塗り潰すつもりだった。
「潤、……お前の好きにしていいんだよ」
櫻井に促され、松本は夢中でその身体に跨った。
震える手で櫻井の肌を愛撫し、舌を這わせていく。憧れの人が自分の舌に反応し、切ない声を漏らしている。その事実に頭が真っ白になりかけた、その時だった。
沈黙を守っていた松本のスマートフォンが、サイドテーブルの上で無機質なバイブレーションを響かせた。