第1章 Under the rader
松本は、一線を超えた。 櫻井の不在を狙い、彼が仕事で使っているダミーの端末ではなく、プライベートのクローゼットの奥に隠された真の通信記録にアクセスし始めたのだ。パスワードを解読し、その奥に隠された秘密を暴けば暴くほど、松本の正義感は悲鳴を上げた。憧れていた背中は、漆黒の嘘で塗り固められていた。
だが、この残酷な真実を知っているのは、世界で自分だけだ。その歪な独占欲が、皮肉にも松本の劣情を煽った。
その夜、セーフハウスに戻った二人の間には、刺すような沈黙が流れていた。仕事中の「櫻井さん」が見せる過剰な甘さは、玄関の鍵を閉めた瞬間に霧散する。
「……翔くん。今日も、いいの?」
松本が問いかけると、櫻井は答えず、無機質な視線のままベッドに横たわった。プライベートでの櫻井は、松本を寄せ付けない冷徹なスパイの顔をしている。だが、松本がその服を脱がせ、無防備な裸体に触れることだけは拒まなかった。
松本は櫻井の身体を組み敷き、彼の細い手首を頭の上で片手で拘束した。櫻井は抵抗せず、ただ天井を仰いでいる。松本は、昼間に見た裏切りの証拠を脳裏に浮かべながら、櫻井の身体に深く指を這わせた。
「翔くん、……っ、なんでそんな顔するの」
松本の指が、櫻井の右脇腹にあるあの小さな隆起をなぞる。櫻井の身体がびくりと震えた。
松本は、自分でも制御できないほどの独占欲を剥き出しにし、櫻井の熱い内側へと力強く突き入った。
「っ……、ぁ……っ!」
櫻井の口から、高く掠れた喘ぎが漏れる。松本は、櫻井の視線を自分に固定させるように、乱暴に腰を動かした。仕事中に見せる慈愛に満ちた櫻井の瞳を、快楽と苦痛で塗り潰したかった。
「……僕のこと、見てよ。前みたいに……見てっ!」
松本は、櫻井の細い腰を砕くように掴み、執拗に最奥を突き上げる。繋がった場所から伝わる櫻井の拍動は、嘘をついている男のものとは思えないほど激しく、生々しい。