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【HQ】アイミスユーの後遺症【孤爪研磨】

第4章 ナイト・メロウ・シンドローム



「花衣は暇だからここにいるの?」
「私も暇じゃないよ」
「なら早く帰りなよ、何時だと思ってるの」
「ママこわーい」
「茶化さないで」


この人は時々こうやって、狡くなるんだよな。心配して来てくれたのか、冷やかしで来たのか。それともほんとは暇で話し相手がほしかったのか。

表情は不機嫌で、言葉単体もそこまで優しいわけじゃないのに、乗せる声だけは異様に柔らかい。それに自分のことは上手に隠して、だけど私がここにいる意味はきっと最初から分かってるんだ。


「見たくなったの、噴水。ほら、夜は光るんだよ?綺麗でしょ?」
「ただの水とライトじゃん」
「風情もへったくれもない言い方やめてー」
「1人で見てなにがおもしろいの」
「えーっと、研磨さん?私これでもまだハートブレイクだからね?もうちょっと言葉選んでくれます?」


真正面には例の水とライト。人がせっかく感傷に浸っていたのに、あまりに淡々と否定されるから、睨むように彼を見てやると、めんどくさそうな顔をした研磨くんがペットボトルのキャップを開けているところだった。

相変わらず線の細い綺麗な指をしてるくせ、筋張った手の甲はちゃんと男らしい。


「………まだ好きなんだ、元カレのこと」
「いきなり核心つきすぎじゃないかな」
「核心もなにも、おれがここに来てからずっと変な顔してるけど」
「ぶさいくな顔は元からです」
「造形じゃないから。未練たらたらで泣きそうな顔って言ってんの」


ほらね。やっぱり最初から分かってた。お世辞でも可愛いなんて言わないし、男友達にそんなこと言われたら、ちょっと距離感考えるレベルだからそれはまぁどうでもいいんだけど。

女々しい姿は見せないようにしてた。いつだって馬鹿みたいに元気な姿で、初めて会った時、実は別れたばっかだったんだよねって。

2人で遊ぶようになって割とすぐ白状した時も、悟られないよう、あっけらかんと笑ったはずなのに。

そのなんでもお見通しな瞳が怖くて下を向く。石段に散らばる無数の小石を、指で拾っては何度も転がした。

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