第4章 ナイト・メロウ・シンドローム
「………そんなヤツ忘れて、おれにすればいいのに」
「え?なに?」
「なんでもない。ていうかそろそろヤバいんじゃない?終電」
「……あ、ほんとだヤバい。帰らなきゃ」
この何とも言えない空気を払拭したくて、思考をフル回転させていたからか、肩が触れ合うほどの距離にいる研磨くんの、小さな声ですら聞き逃してしまった。
終電まではあと僅か。立ち上がるタイミングはほぼ同じ。
ちょっと急ぐよ。そう言って、ほんの少し口角を上げた彼と、最寄りの駅まで並んで歩いた。
※※※※
音に苛ついて目が覚めた。無機質なスマホのアラーム音が鳴るのはこれで3度目で、休みなのにスヌーズ設定を解除し忘れた自分を殴りたくなった。
ベッドの上で体を起こして暫しフリーズ。思考がゆっくりと回り始めた頃、昨夜見た夢を思い出して、なんで飲み会当日に、昔をリアルに再現したやり取りなんて見せるかな。
しかも絶対色ついてるよね、あの時聞き逃した彼のセリフ、絶対自分に都合よく解釈してるよね。
カーテンの向こう、今日も朝から絶好調に晴天。それとは裏腹に、吐き出されたため息は、なんだかとても重苦しかった。