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Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】

第2章 愚もまた一興



「見過ぎじゃろ」
「………なんでわかるの」
「わかるわ、穴開く」
「………すみません」
「いや、別にええんじゃけど、」


そんな見られたら気まずいわ、なんて。
視線が合ったわけでもこちらに顔を上げたわけでもないのにどこに目が付いてんの。気まずいと言いつつそう言う素振りなど一切しない彼は、最後の一滴まで丁寧に琥珀色の液体をカップに注いだ。


「ありがとうございます」


真っ白なシャツの、袖だけ捲った彼の腕の先、これまた真っ白なカップをわたしのもとへと運んでくれる。
グラスを置く時も思ったけど、この人がカップを置くと音がしない。まるでテーブルに吸い付くような動作だった。

立ち上る蒸気に混じる、濃厚な香りはわたしの口角をほんの少し持ち上げてくれて、そのまま一口入れると心の中でガッツポーズ。
たかだか3日やそこらのくせに、まるで何年も恋焦がれてようやく再会したような歓喜。

だけどわたしが焦がれたんじゃない、わたしの体が焦がれたんだ。なんて、とりあえず言い訳しとけば大丈夫だと思う。誰にかは分からないけど。

二口、三口、猫舌のくせに止まらない美味しさを味わっていると、カウンターの奥から聞こえた低い声にびっくりして、口に含む分量を危うく間違えそうになった。


「あんた、魔除けや言うとったな、こないだ」
「聞こえてました?」
「エンジン、……あー、あんたと喋ってた金髪が、あんた帰った後に」
「なるほど」


学生の頃、接客のバイトをしていたからわかる。
印象に残ったり独特な雰囲気の客はネタになりやすい。わたしがどちらに引っ掛かったかは知らないけど、気さくに話してくれたあの男性の名前だけは分かった。



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