Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第2章 愚もまた一興
「なんで魔除けなん」
「え?」
「何から守っとるん」
「んー、」
人を見かけだけで判断してはいけません。
幼少期から色んな所で刷り込まれるそんな言葉も、いざ社会に飛び出ると8割がた見かけで判断する。人間ってそう言う生き物だ。わたしだってそう。めちゃくちゃ第一印象重視派だ。
だから無愛想で無口のレッテルを勝手に貼り付けた彼が、こうしてちゃんと話せる人だなんて思ってなかった。
何から守ってるんだと聞いた彼は、カウンターの中で黙々と仕事をしていた。肌触りの良さそうなワッフルタオルで、洗いたてのカップを拭き上げる。同じことを数回繰り返した後に渋々手を止め、数メートル先のわたしに視線を寄越す。その目には何故だか嘘はつけない気がして、本音を吸い取られるみたいに唇を動かしていた。
「敵?」
「敵て、なんそれ」
「なんだろう、例えば変な人って変な人が嫌いじゃないですか」
「よう分からんのじゃが、そうなんか?」
「そうなんです。………変な人に疲れちゃったから、だったら自分が変な人になろうと思って」
「なんじゃそれ」
ほんと、なんなんだろうね。変な人変な人言いすぎて自分でも何言ってんだコイツ状態だよ。
彼の頭にハテナが浮かんでるような、絶妙にイラッとしたような、そんな表情をするあたり、少なくとも彼にはわたしが変な人に映ってるってことだから、ある意味成功だと思う。
いいんだよ、分からなくて。
これは自分の為だけの決意表明みたいなものだから。
店内にはまた静けさが戻る。
申し訳程度に流れるミスマッチな音楽と、サイフォンが鳴る代わりに今度はカップ同士がぶつかる音。
扉を潜った数十分前よりも格段に落ち着いたのは、わたしの胸から響く穏やかな心臓の音だった。