Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第2章 愚もまた一興
空間そのものとあの香りは魔薬だなと思った。
カフェイン中毒のわたしからすれば尚のこと、たったの3日で音を上げるのも想定内で。
夕方6時。仕事終わりに間一髪滑り込んだDahliaで、わたしは重要なことに気付いてしまった。
閉店間際、閑散とした店内。
何故か見当たらない金髪男性。
そう、あの彼と二人だと言うことに。
2度目の来訪は欲に負けたせいだ。
家で飲むドリップコーヒーはそこそこに、どうしてもまたここの味に浸りたかった。
今日は朝から気分が良くて、それもそのはず、前夜からここへ来ようと意気込んで、就業時間ぴったしにPCの退勤ボタンを打った。帰宅ラッシュを掻い潜り、小走りでDahliaに向かう様は俯瞰で見ると笑えてくる。
扉の前で一度だけ大きく深呼吸をして、そうしてからの現状だ。
まさか彼一人だと誰が思おうか。
入口で突っ立ったままの時間は僅か数秒。
その間、思考は大パニック。
彼がわたしを視界に入れてじっと見てくるものだから、得意なポーカーフェイスを危うく崩しそうになってしまう。
どこに座ればいいのか迷いながらも結局は先日と同じ座席に腰を下ろすと、今日はちゃんと声が聞こえた。
「ブレンドでええ?」
「はい、お願いします」
相変わらず、無愛想と言うか無口と言うか、うっすら流れる音楽とサイフォンが鳴らす液体の音。
きっと雑音も混じってるだろう空間は1度目の訪問よりずっと広く感じる。
注文の入ったコーヒーを淹れる彼に、初めて訪れた時も思った。所作が凄く綺麗だなって。
無骨で細い指先、ドリップポットを掴む手から、一点の淀みもなくお湯が落ちていく。最初に見たあの鋭い眼差しと静かな立ち姿も相俟って、危ういほどの美しさだ。