Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第10章 ワンスモア・ワンダーランド
「じゃあ、歳が近けりゃいいわけ?」
「そう言うことではないけど」
「俺とお前ならいけるってことか?」
「ちょ、っと、……エンジンさん、」
「お前が言ってるのは、そう言うことだろ?」
この人は誰にでも分け隔てなく気さくに対応して、コミュ力お化けで、食えないところが魅力で無意識に他人にパワーを与える、そんな人だ。
「ていうか近いですって」
「わざと近づけてんの。じゃねぇとお前に触れないでしょ」
だけど今隣にいるエンジンさんは昼間の顔とは真逆だ。甘い言葉を吐き出しながら、淡々とこちらの境界線を侵食してくる。
身を乗り出して息がかかるすれすれの位置までその端正な顔が近づいて、そうしてわたしの手首を掴んだ。指先が酷く冷めていて、その温度に全身が固まっていく感覚。わたしがフリーズしているのを他所に、彼の大きな手は頬に触れようとする。そこでやっと我に返った。
手のひらを払いのけ、ゆるりと肩を押すと、悪いと思ってない表情がなんとも腹立たしい。
「え、わたしキレていいところですよね?」
「ごめんごめん、悪かったって。そんな怖い顔すんな」
「いやするでしょ、何血迷ってんのって思いましたよ」
「今のはやりすぎだが、距離感だけで言えばアイツと変わりねぇと思うぞ?」
「は?」
「………あー、はいはい、おっけーおっけー、気づいてないパターンね」
「なにがですか」
「俺なら良い女が隣にいると、今みたいになるの。たぶん他の男も満場一致でな」
けどアイツはどうよ?
距離を取って2本目のタバコに火をつけたエンジンさんの意図なんて、汲み取れたもんじゃない。
何言ってるんですか、そんな視線を投げると、自分が見てきたものを教えてくれる。