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Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】

第9章 ティンカーベルのいない夜



「強すぎて、こっちが泣きそうなる」
「あらら、うちのザンカくんはもうお手上げか?」
「お手上げやったら、エンジンのネタにすら乗らん」


彼女は強い。

何も知らない奴が見たら優しい人で終わるんだろう。でもあの人の強さは、折れない強さじゃない。一度粉々になって、それを自分の手で拾い集めて、無理やり繋ぎ合わせた跡がある強さだ。

笑い方一つ、視線の置き方一つでもそうだ。
相手の目を真っ直ぐ射抜くのではなく、少しだけ視線を外しながらも、相手の挙動をすべて把握しているような鋭さ。 常に周囲を警戒し、最悪の事態を想定して動く野性のような仕草。

そんなこと、一度底を見た人間にしか出来ない芸当だ。

それでも今、ちゃんと根を張って生きてる。
踏まれれば踏まれるほど、見えないところで深くしっかりと。次に何が起きても自分が倒れないように。

それはまるで、


「雑草みたいじゃわ」
「……お前、例えが相変わらず可愛くねぇな。普通は花みたいだ、とか言うだろ」
「花はいつか散るし、手入れせんかったらすぐ枯れるじゃろ。けど雑草は、何度踏まれてもそこにおる」


俺にはその生き様が眩しくて仕方ない。
だから安易に触れられない。彼女が痛みを伴うことなど死んでもしたくない。だが胸の内側をそっと支えるだけで満足、だなんて綺麗事も言えない。

ほんまに、めちゃくちゃ難攻不落じゃわ。



「縁って言うのはよォ、不思議なもんでな、自分の人生に必要な人間とはトントン拍子に行くんだよ」
「いきなりなに言いよん」
「まぁ聞けって」
「…………」
「互いに色々思うところはあっても、もどかしい思いをしてる今でさえちゃんとトントン拍子に乗ってるってわけ」
「………」
「お前と花衣もな」
「………予言者かて、怖いわ」


冷えたコーヒー。吸い殻の山。隣にはニヤニヤと憎いエンジン。
この人には何が見えているのか分からない、確証も根拠もないそんな言葉にさえ、不覚にも縋りつきたくなってしまった。

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