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Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】

第9章 ティンカーベルのいない夜



「お前今日はまた一段と目つき悪かったな、なに、またなんかトラブってんのか?」
「え?なんもないけど、普通に仕事しちょったけど」
「……なんだよ普通に花衣のこと考えてただけかよ」
「またそうやって揶揄うじゃろ、ほんまやめて」



最大限灯りを落とした店内のカウンターにはカップが2つと灰皿が1つ。並んで座ってくだらない話しをする、閉店後の雑談はいつからか恒例になっていた。

ちょうどいい疲労感と頭を使わずにする会話はストレスの吐口に役立っていたのに、ここひと月ほどで度々お目見えするエンジンの俺弄りだけは頭痛がしそうになる。

他人の色恋なんぞ、聞いてもなんの面白味もないじゃろうに。なにをそんな嬉しそうな顔しとるんじゃ。


「で?こないだのデートでキスの1つや2つでもしてきたのか?」
「アホか、指一本触れとらんわ」
「はぁ、なっさけねえなァお前は。絶好のチャンスをみすみす逃すなんてよ」
「あんたと一緒にせんで」
「まぁでも、気持ちは分からんでもない」


難攻不落を落とそうとしてるんだからな。

短くなったタバコはエンジンの最後の一口で、フィルターギリギリのライン。吸い殻を灰皿の底にねじ込むと、逃げ場を失った最後の煙が、細い糸を引くように指の間を抜けていった。難攻不落、が的確すぎて笑ってしまう。


「あんな風に笑える女は強ェぞ。まぁ一筋縄ではいかねえよ」
「そこがええんじゃろ」
「分かってるじゃねえの」


エンジンに媚びを売っていた、いつかの派手なあの常連を思い出した。軽々しく重い言葉を吐き出しては自分の良さを最大限に見せつけようとする。
スキンシップが常で、駆け引きが大好きな人間の浅はかさにはいつも眉根が寄っていた。

軽くあしらわれて、どうしてそこまで熱心にアピールできるのか。あの時の俺は確かにそう思っていた。でも今ならあの女の必死さも分かる気がする。


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