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Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】

第8章 灰とクオリア



「クラゲを見るといつも思うんだけど、泳いでるって言うより飛んでるみたいだよね」
「俺にはビニール袋にしか見えん」
「はは、確かに」


きっとここをデザインした人は、とてつもなくこだわりぬいた設計にしたんだろうけど。ビニール袋なんて聞いたら絶対泣くよ。

光のトリックで、赤から紫、青へとゆっくり変わる空間の、ちょうど端に設置された2人がけのベンチに、並んで座って身も蓋もない会話。
雰囲気にミスマッチすぎて、それが何だかおかしくて笑っていたら、隣から視線を感じた。でも見てあげない。


「なに?」
「横顔、」
「うん」
「横顔が最初やったな思うて」
「ん?」
「付き合うて言うた時、……なんや知らんけど、やられてもうたんじゃ、」


あんたの横顔に。


なんなのわたし。見てあげないんじゃなかったの。見たら色々まずいんじゃなかったの。なんで我慢できないのよ。

だから、照れた自分を隠すようにほんの少しだけ、自嘲気味に笑った彼に目が離せなくなるんだ。

自分の内側に、この水槽のガラスみたいな強固で分厚い壁をせっせと作り上げてきたのに、些細なことで呆気なくヒビが入る。

ああ、これ以上はダメだ。
戻れなくなる前にちゃんと線を引かないと。



「ザンカくん」
「なに」
「わたしね、もう恋愛はしたくないの」
「……なんでか、理由聞いてええ?」


理由なんて山ほどある。何から話せばいいのか分からないぐらい。


息を吸って、吐き出した。
視線をできるだけ遠くに飛ばすと、真っ青な水の中で1番美しく目立つアカクラゲがゆらゆら浮いていた。


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