Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第5章 やわらくてにがい溜息
「普通は、そうですよね。……普通は自分のこと聞かれてもいないのにペラペラ喋らないし、普通は3秒以内に直せない容姿を弄らないし、あ、コイツ無理、って雰囲気ガンガン出してたらだいたい気づくんですよ、普通は、ね」
「………あー、そうですよね、花衣さんの仰る通りだ、はは、まいったな」
滞在時間、僅か数十分。
彼女の底知れぬ技量を見誤った男は、来店した時よりも幾分か小さく見え、そうしてそそくさと店から出て行った。
窓際から最後の最後まで冷たい笑みで手を振っていた彼女が、聞こえるほどの息を吐き捨て、ネジでも錆びてるようなぎこちない動きで俺に向き直る。顔の前で両手を合わせ、それはもう一心不乱に謝罪をした。
「なんでうちでやるん」
「ごめんなさい」
「いや責めてるとかじゃのうて、あんたも嫌やろ、知り合いに見られとるん」
「嫌、ではない、かな?」
「俺は嫌じゃ、気まずいわ」
「……だってここが1番安全だと思ったから」
カウンターの端に移動して、冷めたブレンドを新しいのに変えようとすれば、そっと指先で制される。ザンカくんがせっかく淹れてくれたのにと、捨てるなんてあり得ないと、よそ行きの仮面が剥がれた彼女がやっといつものように笑う。
1番安全。
信頼されてるはずのその言葉に、何かがちくりとして、同時に疑問に思うことがあった。